蜂蜜と竪琴――共感覚

永田です。

昨日、竪琴でバッハの小プレリュードを弾いていて、高い弦を鳴らした時に、蜂蜜の味がしました。
とろりとした、濃い甘さ。
竪琴を弾いていてこんな感覚にとらわれたのは、初めてです。

はちみつ


あまり知られていないようですが、「共感覚」という心理学用語(?)があります。

共感覚――どんなものかというと、「数字を見ると色が見える」「音を聞くと色が見える」というように、ある刺激によって通常とは異なる感覚が生じる、というものです。

たとえば数字の0が白、1が赤に見える……
ドの音で緑、レの音で紫が見える……。

わざわざ努力して思い浮かべるのではなく、自然に見えるのだそうです。
なんだか不思議な感じがしますよね。

でも、超能力とか、神秘的な現象などではなく、ある刺激がちょっと違う回路を伝って別の神経を刺激するという、単にそれだけのことのようです。

数万人に1人しかいない、きわめて珍しい感覚として捉えられてきたらしいですが、近年、共感覚についての真面目な研究が進んでいて、実際には100人に1人程度いるのではないかという説があります。
子供の頃に共感覚を備えている人は割といるらしく、成長するにつれて失われ、忘れられるのだという説も。

ただ、100人に1人だとしても、やっぱり少数派ですよね…。
ほんとですかね…もっといるんじゃないのかな…。

だって、最初に書いた「竪琴の音で蜂蜜の味がする」というのも、共感覚の一種だと思うのですが――そんなに珍しいことなんでしょうかね…。
厳密な共感覚の定義には当てはまらないのかもしれませんが……。

竪琴で味を感じたのは初めてですが、歌っているときやピアノを聴いているときには、わりとよく音に色や味を感じます。皆さんもそんなことありませんか??

私が一番その感覚が強かったのは中学生の頃だったように思います。
私の場合は、ある音を聞くと味がしたり、あるいは景色が見えました。

たとえば中学の合唱部で歌っているとき、和音によっては人参ときゅうりのスティックサラダをかじっている味がしたり。
高音域の二度の不協和音(ドとレ、ファとソ…等)で、雲間から差す太陽の光が見えたり(これは今でもはっきり見えます)
で、それって、普通の感覚だと思ってました。
当たり前のことすぎて、友達との話題にすることも特にありませんでした。

社会人になってから、何かのきっかけで「共感覚」という言葉を知り、調べてみたら、「あれも共感覚なのかな?」と思いまして――でも、そんなに珍しいものだとは全く思わなかったんです。
「特別な感覚みたいに書かれてるけど、そんなことないでしょ?共感覚を持ってる人、たくさんいるんじゃない?」と疑ってました。

後年、「音に味を感じる中学生」をモチーフに児童文学を書き、それが私にとって初の文庫収録作品となりました。(あいち・読書タイム文庫『ビターティラミス』
これを書いたときにも(こんなありきたりの題材、つまらないと思われそうだな…)と懸念していました。

それが、児童文学賞の選評では「共感覚という題材が新鮮で面白い」と書かれ、実際に読んでくれた人達からの感想でも(少なくとも2~30人位から聞いたところでは)、「共感覚って何?」「よくこんな発想ができたね」と驚かれ…逆に驚きました。

その文庫を読んで「私も共感覚あります!」という感想をくれたのが安達さんで、初めてそういう反応に出会ったものだから、その時のことは印象に強く残っています。
だからなのか、安達さんのピアノにはすごく豊かな色彩を感じます。赤や緑など、はっきりした色が多いかな。風景が見えるときもあるな……って、話がそれてますね。

一昨年だったか、末っ子の育児相談でお世話になった臨床心理士さんが文庫を読んで、「私も共感覚があるんですよ。私は文字に色がついて見えます」と教えてくれました。
今までこの2人だけなので、やはり本当に珍しい感覚なのかもしれませんが。

私が音に強く惹きつけられるのは、共感覚によるものが大きいだろうな、と思います。
竪琴の音に魅かれるのも、共感覚に触れそうな音だと感じているから、という気がします。

もっと弾きこんだら、もっと違う味がするかしら(笑)
どんな曲でどんな味がするか、楽しみだわ~♪

余談ですが、フランスの女性ピアニスト、エレーヌ・グリモーも共感覚があるそうで、もし機会があれば生演奏を聴いてみたいです。

この記事へのコメント

  • 安達

    共感覚という言葉は、以前、永田さんに聞いて初めて知りました。芸術に携わる人には、この感覚を持つ人が多いのではないかなと思っています。景色や映像は、私の音楽表現と密接に関わっていて、自分としては何も思い浮かばない状態で音を鳴らしている時は…、指練習の時と技術的に余裕がない時。あとは・・・、曲に共感しきれていない時や、きちんと音楽と向き合えていない時、のような気もする(笑)。
    まだまだ、“竪琴演奏”で映像は出てきませんが(余裕なくて…笑)、初めて音を鳴らした時の映像は記憶に残っているし、一音一音と鳴らすことで、水滴やガラスのような映像が見えることはあります。

    印象的な映像を見るから音を出したくなるし、音を聴くから作品を創造したくなる…芸術は何かのインスピレーションを得て作られることが多いよね(共感覚とはちょっと違う話なのかな??)。
    これらについては、いずれ私も改めて記事を書いてみようかな。“続編~私の場合”、ということで。よろしくお願いします(笑)
    2017年02月13日 21:10

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